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コラム

コラム12 死因贈与は「公正証書」かつ「執行者の定めあり」で(贈与)


不動産の死因贈与契約は登記のことも考えて


不動産の死因贈与契約は、贈与の効力発生を「不動産を持っている人が亡くなった時」とする契約を、『贈与する人』と『贈与を受ける人』との間で、予め結んでおく贈与の方法です。

遺言書による遺贈と似たような方法ですが、遺言書を作る場合と違い、「お互いの合意で契約しておく」という部分が異なります。

また、効力が生じる時が「贈与した人が亡くなった時」とすることが、通常の贈与の場合と異なります。

不動産の死因贈与契約は、公正証書ですること。
かつ、執行者の定めを入れておくことで、後々、登記をする際の負担を減らすことができる、という点をご説明します。


死因贈与契約の方法(私文書と公正証書) 


死因贈与の契約は、お互いの合意に基づき、下記2つの方法があります。

贈与契約書を作成し、お互いに実印を押しておく方法。
公正証書で契約書を作成しておく方法。

※契約自体は、書類を作成しなくても、口頭の約束でも有効となりますが、後日、名義変更の登記する際にトラブルになります。ここでは、口頭での契約は考えないこととします。



「執行者」の定めがなければ、相続人の印鑑証明が必要


また、贈与する人が亡くなられ、死因贈与の効力が生じた時の名義変更の手続きは、「執行者が定められていたかどうか」によって、不動産の名義変更の登記のやり方に違いが生じます。

この点は、実際に登記を扱っている司法書士にしか、見えない大事な部分です。

執行者が決められていれば、執行者の印鑑証明書を提出。
登記関係の書類には、執行者が実印を押印。
→但し、執行者が定められていても、公正証書で契約されていない場合は、死因贈与契約書に押されている贈与者の印鑑に対して、印鑑証明書を添付するか、相続人全員の印鑑証明書付の承諾書が必要です。
執行者が決められていなければ、相続人全員の印鑑証明書を提出。
登記関係の書類には、相続人全員が実印を押印。

登記のために、「相続人全員の印鑑証明書」を用意してもらうのは、煩雑。
「相続人の全員」であることを、戸籍謄本を収集して確定させる必要もあります。

また、相続人の方が、死因贈与の契約がされているのを知らない場合は、当該不動産を相続するものと考えていた相続人と、トラブルになることも考えられます。

以上の理由により、死因贈与の契約は、契約をする時には、「2」に記載のとおり公正証書で行うこと。かつ、「A」に記載のとおり執行者を定めておくことをお勧めしています。


登記の際、いずれにしても「権利証」は必要


なお、死因贈与による名義変更の登記の際には、いずれの方法による場合でも、贈与する人の権利証が必要です。

贈与の効力発生=亡くなられるまでは、不動産を所有している方が権利証を保管しているのが通常です。

贈与を受けるのが、相続人以外の方であれば、権利証をうまく引継ぎできるよう、配慮が必要となります。


「贈与税」ではなく「相続税」の対象 


税金面の特徴としては、死因贈与は贈与税の対象ではなく、相続税の対象です。

将来、相続税が課税される可能性がある方については、死因贈与の契約をされる際に、税理士さんに相談されることをお勧めします。

また、死因贈与の名義変更の際に法務局に納める登録免許税は、固定資産税評価額に対して2%で、相続の場合の登録免許税0.4%に比べて高くなります(遺言書で遺贈する場合の2%とは同じ)。

不動産取得税が必要となることも、相続登記の場合と異なります。


死因贈与で受贈者が先に亡くなった場合 


「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を有しない」(民法994条)とされています。

では、死因贈与契約をしている受贈者が先に亡くなった場合、死因贈与契約の効力はどうなるのか。民法994条が準用されるのか、について、検討が必要です。

この点については、「準用を認めた判例」「準用を否定した判例」両方があり、当事者が判断するのは危険。

「登記情報 NO.735」の80頁には、下記のような事例が紹介されています。
死因贈与の受贈者が贈与者より先に死亡した場合、民法554条により準用される民法994条1項により、受贈者の死亡時点でその効力は失われる(東京高裁判平15.5.28家月56巻3号60頁)。複数の受贈者のうち1名が死亡した場合は、その受贈者についてのみ効力が失われると考えられるため・・・(中略)・・・相続人全員の合意により、『権利者中某につき条件不成就』を原因とする始期付所有権移転一部移転仮登記への変更登記を行った上、妹2名の持分については死因贈与を合意解除して仮登記を抹消することになった。
(月刊登記情報 株式会社きんざい NO.735 2023.2)から引用

共同申請で合意解除等の登記ができる場合はいいですが、「準用しない」とする判例もあるため、登記手続上、真逆の結論もあり得ます。

「準用肯定説」によっても支障が出ないよう、『「死因贈与契約中に、「受贈者が契約の効力が発生する前に死亡したときは、受贈者の相続人が受贈者の地位を承継し、贈与者の死亡により、本契約の目的物件を取得する。」旨の条項を設ける必要が存する』(死因贈与の法律と実務P69 新日本法規出版)という考え方が無難だと思われます。

遺言による相続や、遺贈の場合の、予備的な条項を設ける場合があるのと同じ考え方です。


死因贈与のご依頼は「贈与」に比べると少ない 


死因贈与の契約や、名義変更のご依頼は、贈与、相続や遺贈の登記と比べると、圧倒的に少ないのが現実。

ただ、「特定の不動産だけ」について、将来、「第三者」に名義を変えたいと考える場合には、有効な手段です。

「贈与したい」と考える人が相続人なのか、相続人ではないのか等によって、死因贈与を使うのか、もしくは、遺言書を作るほうがいいのかと、選択肢が変わってきます。


契約時に「仮登記」を入れることも可能 


死因贈与の場合は、仮登記をして、権利の保全ができるというメリットがあります。
一方、遺贈の仮登記はできません。

死因贈与の仮登記を入れる場合、登記の目的は、「始期付所有権移転仮登記」。
原因を「令和5年12月17日始期付贈与(始期Aの死亡)」といった感じで入ります。


★司法書士吉田事務所からのご案内


不動産の死因贈与は、「特定の不動産」を「相続人以外の第三者」に譲りたい時に、有効な選択肢となりますが、名義変更の登記をする時のことを考えて、契約書を作る必要があります。

公正証書作成の費用や、登記の際の費用、その他税金面のメリット・デメリットを踏まえて、ご検討いただくようにしています。

堺市の司法書士吉田事務所では、死因贈与、不動産の相続・遺贈の登記と、遺言や死因贈与契約の公正証書作成に関するご相談取り扱っています。

贈与、相続、死因贈与による名義変更のことは、堺市堺区、三国ヶ丘駅徒歩4分の、司法書士吉田事務所にご相談下さい。

                                                (最終更新 令和6年1月6日)

                                                堺市の司法書士吉田法務事務所
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