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コラム

コラム118 「遺贈」の登記と「相続」の登記の違い(不動産登記)

「遺贈」の登記とは


「遺贈」による名義変更の登記は、遺言書に基づく手続きの中でも、特に、法定相続人ではない人に対し、不動産の名義を変える場合に使われる手続きです。

遺言書による登記の中では、相続人の一部、もしくは全員に対して「相続させる」登記が圧倒的に多いのが実情ですが、手続き上、「遺贈」による名義変更が、「相続」による名義変更の場合と異なるのは、下記のような点です。


登記の申請人 


「相続」の場合は、名義を受ける相続人だけが申請人になるのに対し、「遺贈」の場合は、財産を譲り受ける人と、遺言執行者(もしくは相続人全員)が共同しての登記申請になります。

遺言執行者(もしくは相続人全員)については、印鑑証明書の用意と実印による押印が必要です。

ところで、従前は、相続人に「相続される」遺言は、遺言執行の余地はないため、遺言執行者ではなく、当該相続人が相続登記を申請すべき、とされていました。

遺言執行者が「相続される」旨の遺言書に基づき、相続登記を申請する場合は、相続人から遺言執行者への委任状が必要とされていました(登記研究722号P175)。


登記の申請人(令和元年7月1日からの改正点) 


令和元年7月1日の民法改正で、特定の相続人に、特定の財産を相続させる『特定財産承継遺言』については、被相続人の特段の意思表示がない限り、遺言執行者が単独で相続登記の申請ができる、とされました。

この場合、登記識別情報(新しい権利証)は、遺言執行者に対して交付されます。

ポイントとしては、
1.遺言書の作成が、令和元年7月1日以降になされていること
2.相続の開始が、令和元年7月1日以降であること 

この2点です。

但し、「遺言執行者が相続登記の申請ができる」とされたものの、従前どおり、相続人から相続登記の申請できる点は、変わりません。

司法書士としては、当該相続人が、相続しない意思を持っている場合に、遺言執行者からの単独申請を受けていいのかどうか、という問題があります。相続人が、相続を承認することの意思確認は、必要ではないかと考えています。


登記の申請人(令和5年4月1日からの改正点) 


遺言執行者がある場合、遺贈の登記が、遺言執行者と受遺者の共同申請が必要なことは、改正後も変わりません。

但し、令和5年4月1日以降は、受遺者が相続人である場合に限り、受遺者による遺贈の単独申請が可能となりました。

この点は、相続の開始が、令和5年4月1日以降であっても、同じです。

しかし、財産を承継するのが相続人である場合、一般的には、遺言書で「相続させる」という表現を使いますので、事例としては、あまり出てこないもの、と思われます。


権利証(登記識別情報通知)の要否 


「相続」の場合は権利証(登記識別情報通知)が不要であるのに対し、「遺贈」の登記の場合は必要になります。

権利証(登記識別情報通知)が紛失等によって提出できない場合は、遺言執行者(もしくは相続人全員からの申請による場合は相続人全員)の住所地に、事前通知(法務局からの確認の郵便物)が送られることになります。


住所変更登記の要否 


「相続」の場合は、亡くなられた人の登記簿上の住所と最終住所が一致していなくても、住所の変更登記が不要ですが(但し、変更の沿革が証明できる住民票等は必要)、「遺贈」の場合は、住所変更登記が必要になります。

「遺贈」の前提として住所変更登記を入れる場合、遺言執行者、遺贈者の相続人(1名からで可)、もしくは受遺者(財産を譲り受ける人)が代位して申請します。

代位による登記の場合、代位原因は「年月日遺贈による所有権移転登記請求権」とします。


登録免許税 


「相続」の場合の登録免許税は、固定資産評価額に対して0.4%であるのに対し、「遺贈」の場合は2%となり、相続の場合に比べて5倍になります。

例えば、固定資産評価額が1,000万円の場合、「相続」による登記であれば4万円、「遺贈」による登記であれば20万円です。

但し、「相続人への遺贈の登記」は、登録免許税が0.4%になります。


◎司法書士吉田事務所からのご案内 


司法書士吉田事務所での取扱い事例の中では、遺贈者(亡くなられた方)の相続人全員が関与して遺贈の登記をする事例はなく、全て遺言執行者からの申請であること。

権利証が添付できない場合が多いこと、が特徴としてあります。

ポイントとしては、遺言書を作成する際、登記の手続きを見越して、「遺言執行者」を定めておく、ということです。

権利証がないのは、元々紛失されていた場合の他、亡くなられたご本人から、遺言執行者に引き継ぐ機会がなかったことが原因として考えられます。

遺言書を作成する時には、「遺言執行者」を定めておくことと、相続による場合と遺贈による場合の登録免許税が違いますので、「相続」による名義変更が可能な関係であれば、「遺贈する」ではなく「相続させる」という表現を用いるようにしています。

相続登記、遺贈による名義変更の登記は、堺市、三国ヶ丘駅徒歩4分の司法書士吉田事務所にご相談ください。

                               
                              (最終更新 令和6年11月12日)

                                堺市の司法書士吉田法務事務所
                                  司法書士 吉田浩章
                                             
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