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コラム

コラム28 商号変更による有限会社から株式会社への移行(会社登記)

会社法施行時に存在していた「有限会社」の選択肢 


平成18年の会社法施行を機に、有限会社は設立できなくなりましたが、会社法施行時点で存在した有限会社は、

1.そのまま有限会社として存続する
2.商号変更により株式会社に移行する

どちらの選択も可能とされました。

司法書士吉田事務所では、会社法の施行日当日にも、有限会社から株式会社への移行の登記を申請しました。当時は、「いずれ、有限会社は存続できなくなるのではないか」という噂もありました。

また、「信用面を考えると、やっぱり株式会社のほうがいい」という考え方もありました。

会社法が施行されてから日が経つにつれ、「株式会社に変えたい」というご依頼は減っていますが、それでも、時々ご依頼はあります。

このページでは、「2」有限会社が株式会社に移行する場合に、実務上ポイントとなる点について、まとめています。


商号変更による株式会社への移行の登記 


商号変更による株式会社への移行の登記は、株式会社の『設立の登記』をすると共に、有限会社については『解散の登記』を申請します。

登記の申請書には『商号変更による設立』としますが、「会社名だけを変える手続き」ではありません。

登録免許税は、設立の登記3万円(資本金に変更がない場合)、解散の登記3万円。

登記が効力要件とされている(登記の申請日が、株式会社への移行の日)とされているのも特徴です。


有限会社の役員には任期の定めがなかった 


有限会社の役員には、任期に関する制限がありませんでした。

「任期の制限がない」=定期的な役員の重任登記をする必要がない点が、有限会社として維持するメリットの一つでもあります。

株式会社に移行することで、最長でも10年に一度、役員に変更がなくても、重任の登記をする必要が生じます。

また、株式会社への移行の時点で、任期が満了していることになる役員は、株式会社への移行の時点で退任します。移行の決議と同時に、役員を選び直すことになります。

新たに就任する取締役については、就任承諾書についての印鑑証明書が必要。

代表者の変更を伴う場合は、代表者を選定する有限会社の議事録に、旧代表者が届出印を押しておくことで、議事録に添付する印鑑証明書は省略できます。

役員が株式会社への移行と同時に就任した場合は、移行の日を就任年月日として登記。会社設立時から存在する役員については、会社設立の年月日を、登記官が職権で登記します。

なお、有限会社に取締役がABCがおり、Cの任期だけがまだ残っている場合は、株式会社への移行時にCだけ一旦辞任させることで(辞任の登記は不要)、株式会社に移行した後の取締役ABCの任期を揃えることができる、というのも、実務上よくある例です。


役員や資本金、本店に変更がある場合の登録免許税 


商号変更による株式会社への移行を条件に、定款のその他の内容を変更をする場合、設立の登記に変更後の内容を記載して、登記することができます。

例えば、このような変更が考えられます。

1.役員を変更する
2.商号(会社名)を変更する
3.目的(事業内容)を変更する
4.資本金を増加する
5.発行可能株式総数を増やす

但し、本店の移転をする場合は、設立の登記に含めて申請することができず、別途の申請が必要です。本店移転登記の登録免許税は、法務局の管轄内移転の場合で3万円。管轄外移転の場合は3万円×2で6万円。

また、役員の変更・会社名の変更等は、別途の登録免許税の負担は不要ですが、資本金の増加を含む場合、移行前の資本金に相当する部分については1.5/1000。超える部分については7/1000で計算します。

例えば、資本金300万円の有限会社を、資本金1000万円の株式会社にする場合は、300万円×1.5/1000で4,500円。700万円×7/1000で49,000円。合計53,500円になります。


本店移転登記は別途の申請が必要 


商号変更による株式会社への移行と共に、本店を移転させる場合は、株式会社への移行する登記に含めて申請することができず、別途の登記申請が必要です。

1.管轄内移転の場合
「設立の登記」→「解散の登記」→「本店移転」とすることも(株式会社への移行を条件にする場合)、「本店移転」→「設立の登記」→「解散の登記」(登記研究701号P208)とすることも可能です。
  
2.管轄外移転の場合
「設立の登記」→「解散の登記」→「旧本店での本店移転」→「新本店での本店移転」という流れになりますが、登記の完了までに時間を要することになります。

当事務所の取扱い事例では、先に管轄外への本店移転登記だけを完了させておき、その後で株式会社への移行の登記をした、という例があります。

この場合、新しく作られる株式会社の登記簿には、登記記録に関する事項に「有限会社から商号変更し、移行したことにより設立」と入り、本店移転の記録は表に出てきません(この形が、依頼者の要望でもありました)。


支店設置の登記も別途の申請が必要 


支店設置の登記も、本店移転と同様に、別途の申請が必要です(登記研究701号P208)。

「設立の登記」→「解散の登記」→「支店設置の登記」という流れになります。


株主総会議事録に関する「株主リスト」の作成者 


有限会社から株式会社への移行を決議する株主総会に係る株主リストは、株式会社の代表者が作成する、で受理されています。

この点は、吸収合併の際に、「消滅会社の株主リストの証明者が存続会社の代表者とする(法務省:株主リストに関するよくある質問による)」とされていることと、同じ矛盾点があります。

有限会社が株式会社への移行を決議した時点では、株式会社に移行する効力が生じていないためです。


◎司法書士吉田事務所からのご案内


堺市の司法書士吉田事務所では、有限会社から株式会社への移行の登記を取り扱っています。

資本金の額の変更を伴う場合(第三者割当、利益剰余金の資本金への組み入れ)、本店移転を伴う場合、支店設置を伴う場合の取扱い事例もあります。

会社登記、商業登記は、堺市堺区、三国ヶ丘徒歩4分の、司法書士吉田事務所にご相談下さい。

                                                (最終更新 令和6年3月23日)
                                                                       
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                                                  司法書士 吉 田 浩 章
                                             

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